【詐欺ニュースまとめ 9/21】流出した“ニセ警察”の通話音声と4800万円 元女子アナは全財産5000万円を失った
9月21日までに報じられた詐欺は15件。大分ではニセ警察詐欺の通話音声が公開され、同じ手口で40代女性が4800万円を奪われていた。奈良は人口当たり被害が全国ワースト、福井は8か月で昨年1年を追い越した。
1. 「第三者のいない静かな環境を」 流出した“ニセ警察”の通話、そして4800万円
警視庁を名乗る男が大分市の50代男性のスマートフォンに電話をかけてきたのは8月だった。千葉で起きた事件にあなたの名前が浮上した、と切り出す。そして最初に求めたのが「第三者のいない静かな環境」である。マネーロンダリングに加担した疑いがある、身分証を持って千葉県警へ来い、20日間の勾留を請求する。電話は「千葉県警捜査2課」を名乗る別の男へ転送され、今一人でいるのか、長く話せるのかと執拗に確かめてきた。男性が詐欺だと気づいていることを告げると、通話は一方的に切れた。「思ってた以上に手がこんでる」。男性はそう振り返る。この音声をテレビ大分が入手した。大分県警の担当者は、遠い県の警察を名乗るのがこの手口の特徴だと指摘する。近ければ署へ確かめに行かれるからだ。同じ8月、大分市の40代女性は約4800万円を奪われている。顔写真が並ぶリスト、逮捕状の氏名欄、自分の名前が入ったキャッシュカードの画像。次々と送りつけられた。警察が携帯越しに捜査資料を見せることはない。
2. 勝手に入れられたLINEグループ「A先生の錬金術」 70代元アナが全財産5000万円
1980年前後の“女子アナブーム”を駆け抜けた70代の女性がいる。地方局でニュースを読み、昭和天皇崩御の際には特集番組を担当した。その人が、わずか1か月で全財産5000万円を失った。始まりは2022年ごろ。住み込みで親族を介護し、外との交流が絶たれていた時期に、気づけば「A先生の錬金術」という見知らぬグループLINEへ入れられていた。LINEには、招待の確認なしに自動で追加される設定がある。中では1億円儲けたという話が飛び交っていた。介護していた親族が亡くなり、遺産4500万円が口座に入った2023年6月。先行きへの不安から、リーダー格とみられる人物に通話した。返ってきたのはFXという答えと、全戦全勝で必ず勝てるように教える、という売り文句だった。架空の取引アプリへ誘導され、8回に分けて5000万円を送金した。出金したいと申し出ると、今度は税金300万円が必要だという。知人の一言で、ようやく気づいた。署に相談すると刑事から返ってきたのは、投資なら欲をかいたのでは、という言葉だった。
3. 「あなたの会員番号が使われた」 防犯協会をかたる電話から、段ボールで500万円
入口は昨年11月の一本の電話だった。秋田県大仙市の80代女性宅に、「秋田県防犯協会」の職員を名乗る女から連絡が入る。会員として登録されている、と。身に覚えがない女性が解除を求めると、代わりの人を紹介してほしい、いなければ自分が探す、と言われ、見知らぬ男性の名前を告げられた。ここまでが仕込みである。今年2月ごろ、別の女と男から電話がかかってくる。代わりになった男性があなたの会員番号を使い、ボランティア団体の金を違法に送金した。架空の取引帳簿を作るのに500万円が要る、後で返す——。女性は今年4月、現金500万円を段ボールに詰め、指定された住所へ発送した。返金はない。今月19日に家族へ相談して、ようやく発覚した。大仙署が20日に発表している。電話から発送まで約5か月。奴らはそれだけの時間をかけて、一人の高齢者を追い込んだ。
4. ビデオ通話に映った“警察手帳” 松阪の50代男性が1日で150万円
三重県警松阪署が20日に発表した被害は、たった1日で完結していた。19日、松阪市の50代会社員の携帯電話が鳴る。名乗ったのは香川県警の警察官だ。あなた名義の口座が勝手に作られ、資金洗浄に使われていると判断した、名義人のあなたにも加担の疑いがある——。話はLINEのビデオ通話へ移った。画面越しに突きつけられたのは、偽の警察手帳である。男性は信じた。そして同じ日のうちに、紙幣調査という名目で2回、指定口座へ計150万円を振り込んでいる。おかしいと思ったのは、その後だった。男の電話番号をネットで検索して、ようやく詐欺だと分かった。三重の住人に香川を名乗る。画面越しに手帳を見せる。どちらも型どおりの手口だ。警察がビデオ通話で身分証を示すことはない。
5. 人口当たり全国ワースト 奈良が「特殊詐欺非常事態宣言」を発令
奈良県と県警、県内の金融機関が15日に県庁でそろって会見し、「特殊詐欺非常事態宣言」を発令した。昨年の県内被害額が人口当たりで全国最悪になったためだ。2025年の認知件数は535件、被害額はおよそ58億円。今年も8月末の時点で395件、約47億円に達し、被害額は前年同期の6割増という勢いである。目立つ手口はSNS型投資詐欺、オレオレ詐欺、そしてニセ警察詐欺の三つ。被害者の多くは、特殊詐欺という犯罪があることを知っていた。知っていて、なお落ちる。ニセ警察詐欺では他人に相談すれば逮捕すると脅し、周囲から切り離す。発覚が遅れ、被害額が膨らむ構図だ。きっかけの約8割が電話で、そのうち約8割が「+」で始まる国際電話だった。10月1日から来年2月まで、県は啓発運動を展開する。補正予算案には1700万円を計上した。
6. 【続報】福井、8か月で14億9589万円 昨年1年をもう追い越した
福井の数字が、4か月を残して昨年を越えた。県警のまとめによると、今年1〜8月の県内の特殊詐欺被害額は14億9589万円。過去最悪だった昨年1年間の14億4740万円を上回っている。認知件数のほうも160件に達し、147件だった昨年をすでに超えている。内訳が、いまの詐欺の地図をそのまま映す。偽警察官詐欺が36件で5億7710万円、SNS型ロマンス詐欺が33件で3億7045万円、SNS型投資詐欺が40件で3億6783万円、副業詐欺を含む架空料金請求詐欺が28件で7545万円。年代別で最も多いのは60代の36人だった。うち約7割にあたる25人が、SNS型の投資かロマンスでやられている。子育てを終え、老後の資産を増やそうとする世代が狙われていると県警はみる。ロマンス詐欺に限れば、被害者は女性9人に対し男性24人。狙いは男にも向いている。
7. うその投稿からLINEへ、9回に分けて 太田の60代男性が1853万円
群馬県警太田署が20日までに発表した。太田市の60代男性が、SNS型投資詐欺で現金計1853万6117円をだまし取られている。端数まで残る数字が、やり取りの回数を物語る。男性が投資に関するうその投稿に反応したのは4月13日ごろ。そこからLINEへ誘導された。待っていたのは「投資の先生」と「アシスタント」を名乗る人物たちである。うその投資話を持ちかけられ、6月15日から8月10日までの間に、投資金や出金の名目で9回にわたり指定口座へ現金を送った。約2か月で9回。奴らは一度に奪わない。名目を変えながら、少しずつ、繰り返し引き出させる。出金しようとすると新たな費用を求められる——金額が違っても、この構造だけは毎回同じだ。県警は詐欺事件として捜査している。
8. サポート詐欺の報告が2.5倍 生成AIの回答が詐欺サイトの入口になり始めた
偽の警告画面を出して電話をかけさせるサポート詐欺。トレンドマイクロが8月20日に公表した今年上半期のリポートによると、同社に寄せられた報告は5499件で、前年同期の2.5倍に膨らんだ。1月から6月まで、全ての月で前年を上回っている。狙われているのは個人だけではない。4月中旬からは大手ECサイトや国税庁を装い、5月からは人事評価といった社内連絡を装う文面が確認された。標的は法人の従業員へ広がっている。もう一つの警告が重い。生成AIの回答そのものが、詐欺の入口になり始めた。同社の検証では、公式サイトのURLを聞いただけで詐欺サイトが示される場合があったという。検索結果に出るAIの要約でも同じ問題が起きていた。商品ページに仕込んだ見えない指示で、AIの買い物エージェントの予算を30ドルから85ドルへ引き上げた例もある。AIが案内したURLも別の経路で確かめろ、というのが結論だ。
9. 「『いいね』を押すだけで稼げる」 国民生活センターが注意喚起
「いいね」を押すだけ。簡単に稼げる。そんな広告を見て申し込んだ人が、逆に現金をだまし取られる。そうしたケースが急増しているとして、国民生活センターが注意を呼びかけている。沖縄タイムスが伝えた事例では、20代の女性がSNSを通じて業者とつながり、動画を見て「いいね」を押せば金がもらえる、と言われた。入口が軽い。誰にでもできそうに見える。そこが狙いだ。広告をタップした時点では、まだ何も失っていない。だから警戒が緩む。「いいね」を押す程度の作業で金が出るなら、その金はどこから来るのか。答えは、後から金を出させられる誰かの財布からだ。稼げる話が向こうから勝手に来た——その一点だけで、十分に疑う理由になる。
10. 掛川署管内、8か月で2億5800万円 件数は前年の3.6倍に
静岡県の掛川署で17日、警察署協議会が開かれ、管内の状況が報告された。今年1〜8月の特殊詐欺の認知件数は36件で、前年より26件増えている。被害額はおよそ2億5800万円、前年比でおよそ1億8800万円の増加だ。件数は3.6倍、金額も3.7倍近い。一件あたりの被害は700万円前後でほとんど変わらず、件数がそのまま膨れ上がった形である。手口が急に凶悪になったのではない。単純に、届く電話の数が増えている。全国ワーストを競う県の話ではなく、一つの署の管内でこの伸び方だという点が重い。これまで詐欺と無縁だった層にまで、奴らの電話が届き始めたということだ。
11. 口座と携帯を売った2人 秋田県警、8月に8件を送致
詐欺そのものではない。だが、それがなければ詐欺は回らない。秋田県警が8月に送致した特殊詐欺を助長する犯罪は8件、2人だった。内訳は、他人に譲り渡す目的で不正に口座を開設したり携帯電話を契約したりした詐欺が3件1人、正当な理由なく他人へ口座を譲り渡すなどしたものが5件1人。いずれも前の月より減っている。2人の動機は、金欲しさや生活に窮したことだったという。奴らがかけてくる電話の番号も、金が振り込まれる口座も、どこかの誰かが売っている。売った側も犯罪者だ。県警は、他人から口座の譲り渡しを求められたら通報するよう呼びかけている。求められた時点で、相手はもう詐欺の側にいる。
12. 空の財布を見せて「電車賃がない」 81歳の男を詐欺未遂で逮捕
兵庫県警伊丹署が21日、詐欺未遂の疑いで京都市内の無職の男(81)を逮捕した。逮捕容疑は20日午後8時20分ごろ、阪急伊丹駅近くの路上で、通行人の34歳男性に空の財布を見せ、仕事で京都まで行かないといけない、などと声をかけ、現金をだまし取ろうとした疑いである。手口は古い。舞台は令和の駅前だ。男が別の通行人にも声をかけているのを見た男性が110番し、駆けつけた署員が調べると、男は空の財布とは別に、現金の入った財布も持っていた。見せる財布と、隠す財布。二つ用意していたことになる。男は容疑を認め、だまし取ろうとしたが相手に気づかれた、と話しているという。SNSも暗号資産も出てこない。それでも詐欺は詐欺である。
13. 船橋で4000万円、四街道で100万円 千葉の「電話de詐欺」
千葉県警が「電話de詐欺」と呼ぶ被害の発表が、20日に相次いだ。船橋署によると、船橋市の女性が4000万円をだまし取られている。四街道署の管内では、75歳の女性が100万円。いずれも手口の詳細は公表されていない。分かっているのは金額と、電話から始まったという一点だけだ。それでも4000万円は重い。同じ日、同じ県で、桁が二つ違う被害が並んだ。奴らは相手の懐具合を見て、引き出せるだけの額を決めている。4000万円は、4000万円を持っている人のところにだけ請求される。千葉県警が手口の名前を「電話de詐欺」で統一しているのは、入口がどの手口でも結局は電話だからだ。金額の交渉は、受話器を取った瞬間から始まっている。
14. 双子の兄になりすまし続けた男 韓国の追跡チームが半年で2318人検挙
職務質問のたび、一卵性双生児の兄の身元を突きつける。それで警察の追跡をかわし続けた男が、ついに捕まった。偽のネット通販サイトを開き、中古のブランド品を売ると称して61人から約2000万ウォンを奪った容疑だ。共犯は海外へ逃げていた。決め手になったのは、男がゲーム好きだという一点である。警察は20か所以上のネットカフェを一軒ずつ聞いて回り、身柄を押さえた。韓国警察庁の国家捜査本部が21日に明らかにした。長期間捕まらない詐欺犯や、捜査が中止された事件の被疑者を専門に追う「悪性詐欺追跡チーム」は、3月から8月までに詐欺事件4204件を再追跡し、2318人を検挙している。規模は全国261署で284チーム、1006人。不動産や事業資金の名目で約5億ウォンを詐取し、7年間逃げ続けた男も、時効の成立前に捕まった。
15. ミュール口座を100万件超凍結 タイ当局が資産凍結を速める
タイ証券取引委員会が、詐欺ネットワークと国境を越えた資金洗浄への締め付けを強めている。証拠が十分な案件では資産を即時に凍結する方針だ。一方、証券がらみの込み入った案件では、誰が本当の持ち主なのかを特定するのに時間がかかるとも説明している。証拠が固まらないうちに一部の関係者へ手を出せば、同じ事件の別の人物を取り逃がしかねないという理屈である。資金洗浄防止局や警察と連携し、複数の法域やデジタル資産の経路をまたいで動く金を追う。タイではこの一年、対策が加速した。デジタル経済社会省の集計では、受け子役に使われたいわゆるミュール口座を延べ100万件以上凍結し、被害額を月あたり17億バーツ程度まで抑え込んだとされる。口座を潰せば、被害は減る。数字がそれを示している。
断言する。“遠い県の警察”を名乗った時点で、それは詐欺だ。
今日並んだ被害には、共通の骨がある。香川県警を名乗って三重の男性に電話し、千葉県警を名乗って大分の男性に電話する。大分県警の担当者が言う通り、ニセ警察は必ず遠い県を名乗る。近ければ署へ確かめに行かれるからだ。そしてもう一つ。奴らは必ず、一人になれと言う。静かな環境を作れ。他人に相談すれば逮捕する。誰にも言うな。奈良で被害額が膨らむ理由も、大仙の女性が5か月気づかなかった理由も、そこにある。金を出す前に誰かへ話せば、ほとんどの詐欺は止まる。だから奴らは、まずそこを塞ぎにくる。遠い県の警察を名乗る電話。一人になれという指示。この二つが揃ったら、もう中身を聞く必要はない。切っていい。